宛てもなくウロウロするという行為は、無駄な時間を過ごしていると言ってしまえばそれまでだが、2人だけの贅沢な時間の使い方だと私は感じている。

 飲食店が軒を連ねる雑居ビルに入ったエスカレーターで2階に上がったところで、セパレートで仕切られた空間があった。

 占いの館とある。普段なら見向きもしないけれども、何故か彼が立ち止まった。

「占ってもらう?」
「占ってもらうって何を?」
「何でもいいんじゃない? 金銭運でも仕事運でも――これからの僕たちのことでも」

「でも……最低な占いが出てもしらないよ」
「細かいことは気にしない。当たるも八卦ら当たらぬも八卦ってね」
「はいはい。そうだね」

 彼は普段からあまり占いの類を信じるタイプではないが、今日はとにかく普段とは違うことがしてみたいらしい。

 半ばノリでセパレートの中に入った。

 そこは2、3人がようやく入れる空間だった。奥に1人通れる程度の暖簾がかけられた入り口がある。