朝起きると目の前には彼の顔。寝顔を見れる時もあるし、逆に先に起きてて、私の寝顔を見られている時もある。

 スッピンを間近で凝視され、両手で顔を隠す。止めてよ、恥ずかしい。

「いおは綺麗だから大丈夫だって」

 何が大丈夫か分からない。目や鼻の形や配置と、肌の良し悪しは話が違う。

 おでこにニキビができやすくて、前髪でなるべく隠しているのに。

 それでもとにかく幸せだった。

 彼のところに泊まる時は、心配をかけてはいけないからと哲史には連絡を入れていた。

 もちろん形だけの親子だ。哲史はいちいち私のことに干渉はしてこないし、私は哲史の交友関係には一切口出しをしない。

 各々の生活を脅かすような事件や犯罪に関わらなければそれでいい。それが私と哲史の距離感。私と哲史の間の不文律だ。

 私はこのまま大学を卒業して、どこかの会社に就職して、彼と結婚して新しい家族を作る。

 そうなることを疑ってはいなかった。