通帳に残されたお金から入学金を払い、高校も無事卒業、晴れて私は大学生になった。奨学金制度も利用できることが決まっていて、とりあえず卒業までは学費の心配はいらない。

 彼もまた就職を決め――筆ペンを主に作っている企業への就職を決めた――、最初の3ヶ月は研修の為、会えない日々を送ることになる。

 彼の方がもっと大変だろうが、私もまた慣れないキャンパスライフに心細くなり、何度、彼の研修先に足を運びかけただろう。

 辛うじて踏みとどまれたのは、夜遅くではあるが、必ず彼がメールを送り続けてくれたからだ。

 私にとっても――多分、彼にとっても――地獄のような3ヶ月の後、彼は戻ってきた。

 研修から戻ると、彼はすぐに一人暮らしを始めた。

 土曜日の夜、彼の部屋で食事して、キスをして――とうとう彼と結ばれた。

 どれくらい凄いことなのかと、この日のことを考え、ずっとドキドキしていた。しかし致してしまえば、何だ、こんなもんかと拍子抜けした部分もあるにはあった。

 ただ言えることは、何となく肩から荷が降りたということだ。もちろん何を重荷と感じていたのかは、私自身、実はよく分かっていない。

 その日から週末ごとに彼と会い、彼の仕事のことを聞き、私はお返しに大学のことを話すようになった。彼は予想以上に料理が上手で、手料理を振る舞ってくれて、でも時々は私の拙《つたな》い料理もテーブルに並べて、その時の彼の表情に一喜一憂しながら夕食を楽しんだ。

 そして、その日の最後には結ばれるというルーティンが二人の間ででき上がっていた。