大手文具メーカー勤務が決まれば、全国転勤、場合によっては海外赴任もありうる。そうでなくて首都圏や関西圏など都市部勤務の可能性が高く、遠距離恋愛も覚悟していたから、いずれにせよ地元での就職に実は少しホッとしたりもしていた。

 彼との日々は間違いなく私の生活の一部だ。彼なしでの生活は考えられない。

 そうこうしているうちに私の受験が始まった。

 受験をすることは生まれて初めてのことだ。今の高校入学は佐藤からのプレゼントだ。どのような手続きを踏んだかは私には分からないが、佐藤の独断と偏見で決められていた。

 緊張の中、まずは私立の受験に挑んだ。

 最初の1校目は本当に緊張し過ぎてほとんど記憶にない。しかし、意外と図太い性格のようで場を踏む度に落ち着きを取り戻し、3校目以降はまずまず自分らしく受験を受けることができた。

 結果は4勝1負。その負け1も、最初の受かっても落ちてもどうでもいいような学校だったから、上出来だと言えた。

 続けてはセンター試験。私には決定的な欠点がある。数学が本当に苦手なのだ。案の定、センター試験の自己採点では数学が大きく足を引っ張った。

 担任とも相談し、一応、地方の国公立を受けたものの、あえなく撃沈。浪人するという選択肢もあるにはあったが、そこまで国公立に未練があったわけでもこだわりがあったわけでもないから、受かった私立の大学から一つを選んだ。