一生、誰かと付き合うことも結婚することもないものだと思っていた。町から逃げる回数を重ねる度、心は鉄のように冷たく硬くなって、諦めるということをどんどんと容易くしていった。

 なのに――それなのに付き合ってくれという人がいる。初めて惹かれて、初めてデートして、初めて手を繋いで、会えない時間がもどかしくて、でもこちらからは何も言えなくて、心を激しく揺さぶられ――ただただ戸惑った。

「嬉しいの……」

 何度も口をパクパクさせ、ようやく声が出た。

「ホントに?」

「私……誰にも好きになってもらえないと思ってたから」

「オッケーと思っていいんだよね?」

 噛みしめるように私は何度もうなずいた。

「宜しくお願いします」

 そう彼は言い、私は彼に抱きしめられた。