でも現実はそうはいかない。彼との距離は縮まるどころか、むしろ時間ともに開いている。

 時折、美来が机にやってくるが、具体的なことは何も話せない日が続き、美来がやきもきしているのも伝わってきていた。

「もういい加減、自分から告りなよ」

 美来は想像していた以上にせっかちで、お節介焼きだ知った。

「ごめん。自信ない……」

 もうじれったいなぁ。美来が腕を組む。

「こっちから言えないってことは、要は向こうから告白してこれば問題ないんだよね?」
「うん……まぁ、そうだけど……」

 そんな可能性は万に一つもあるのだろうか。同姓同名、字まで同じという偶然マジックの効果は当の昔に切れてしまったと考えて差し支えない。

 何となく運命を感じて映画を見て、勢いというか成り行きというか雰囲気というか、そういうもので手まで繋いでしまったが、家に帰り、冷静さを取り戻してしまったら、そこまで盛り上がるほどのことではなかった。彼の行動を私なりに分析すると、こんなところだろう。

「教えてあげる」

 美来が私の手を取った。

「私の言うとおりにすればいいよ」