結局はその後もデートで手をつないだことに触れることはできず、何の進展もないまま日々が過ぎていった。

 バイト先でも彼とは話はしない。いや、しないというよりできない。そもそもホールとキッチンではおしゃべりなんかする機会なんてほとんどない。帰りの時間が合えば、自転車置き場で話もできるが、今は店も忙しく、それもない。

 加え、最近、彼は何やらバイトを増やしたようで、それに伴ってあぐりのバイトが減り、顔を会わせる機会さえも減っていた。

 メッセージのやり取りこそは続いているものの、返事が来るまでの時間も伸び、夜の場合は返事が翌朝になることも珍しくないばかりか、全体的におざなり感がにじみ出てしまっている。

 あぁ、こんなもんか。落胆。嘆息。そして――後悔。何でデートなんてしてしまったのだろう。

 寝る度に思い出すのは、やはり手を繋いだ時のこと。通り過ぎた人たちは、私たちの方をチラチラ見ていた人もいたと思う。極めつけは、目が合った同い年くらいの女の子たち。

 そのうちの一人は、私と彼の顔を交互交互に見て、最後に繋がれた手を見た。いいな。羨ましいな。彼女の瞳にはそんな色。少なくとも彼女には、私と彼はカップルに見えていたはずだ。初々しくて仲睦まじい出来立てカップル。