恥ずかしくて否定したかったが、ではどうして手を繋いだのかを問われると、それはそれで返答に困る。

「告っちゃいなよ」

 女子校生のお決まりパターンだ。恋を後押ししたい。その成り行きを見守っていきたい。そこに責任はない。フラレれば、残念だったね、また頑張ればいいよと慰められる。もちろん成就したら――一緒に喜ぶ。

 どちらの結果になろうが構わない。一種のレクリエーションのようなもの。

 しかし、そんなに簡単に乗せられるわけにはいかない。

 その結果に一喜一憂するのはいいが、フラレた場合、バイト先に居づらくなる。自分の都合だけでバイトを辞めるわけにはいかない身分だ。気まずくなったバイト先を想像して、震えが襲う。

「いや……そこまでは」

 あまりにもリスクが高い。

「告っとかないと後々後悔するよ」
「まだ自分の気持ちがハッキリしないし……」
「私たちは応援するから、頑張ってみな」
「ありがと」

 完全否定をして嫌われたらたまらない。今は差し障りないよう言葉を濁しておくことにした。