ピント外れな言葉に、思わず声を上げて笑ってしまった。

「どうした? 急に」
「ごめん。何でもない」

 慌てて両手で口を塞いだ。映画館だし静かにしないとね。そう私はささやき、言葉を続ける。

「別に私は映画を見ながら、何かをつまみたいとは思わないから、気にしなくていいよ」
「ホント? ならよかった」

 そうこうしているうちに、暗くなり、映画が始まった。

 彼の隣だからどうなるかと思ったが、案外と集中できた。

 CGをこれでもかと駆使したファンタジー超大作。迫力ある映像に引き込まれた。

 映画館の大スクリーンで見たのはいつぶりだろう。事件が起きる前まではたまに父親に子供向けのアニメ映画を見せてもらってたように思う。事件が起きてからは――それどころではなかった。

 映画を見終わると、同じショッピングモールの中のレストラン街をうろつき、どこがいい、ここにする? とすったもんだした挙げ句に、お好み焼き屋に落ち着いた。