「なのに美術部?」
「それでも美術部なの!!」

 ほっぺたを膨らませて、彼の肩を叩く。

 そうこうしているうちにも時間が来て、私たちは映画館に向かった。席は決まっている。隣同士。上映前、彼の横顔を思わず見てしまい、その刹那、恥ずかしくなってしまって、慌てて視線を前に向けた。

 改めて感じる隣に田中伊織の香り。間違いなく、彼は隣にいる。

 今一度、彼の横顔を瞥見した。思わず彼が白馬に乗る姿を想像して、そんな少女漫画的発想に、私は顔が熱くなる。

「どうしたの?」

 不意に視線が合う。

「な、何でもない」

 横顔に見とれていたなんて言えない。

「あ、そっか」

 急に彼が声を上げた。

「やっぱ映画って言ったらポップコーン必要だよね? ごめん、気が付かなくて」