「あんまり見ないでよ。恥ずかしいから」
「大丈夫。ちゃんとできてるって」
「んなわけないじゃん。全然ダメ」
「誰も最初からうまくはできっこないし」

 そんな理屈くらい言われなくても分かっている。というよりも――。

「やっぱりうまくできてないって思ってるじゃん」
「いや……それは言葉の綾というか、話の流れというか……」

 そうだ。彼が突然、手のひらを打った。

「今度、姉を紹介してあげよっか? デパートで化粧品販売してるから、メイクも詳しいと思うよ」
「ホントに?」
「いおは綺麗な顔してるから、化粧映えもすると思うし」

 何気なく綺麗と言われ、心が踊った。

 その後、二人で駅へ移動した。電車に二十分くらい揺られ、一番近い繁華街の駅で降りる。

 駅前のショッピングモールに映画館が入っているのだ。