その後知ることになるのだが、心理学で、類似性の法則というものがある。

 なんてことはない。共通項があると不思議と親近感がわくというものだ。同じ故郷出身だ。同じ趣味がある。そればかりか同じ年齢だというだけでも、相手との間の敷居が格段に低くなる。

 もう一人の田中伊織の場合もまた例外ではなかった。

 バイト先で厨房に入る時、ちょくちょく彼と視線が合うようになった。余裕がある時には、笑みさえ返してくる。

 お盆から夏休み明けくらいまでは毎年のように極端に暇な日が点在するようで、私は何度か彼と同じ時間に上がる機会があった。

 普段は高校生の私の方が早く上がるのだ。

 意識して待ち合わせるわけではないが、ほとんど使われない自転車置き場では、やはり顔を合わせる。

 どうも。そんな軽い挨拶。くすぐったくなって笑ってしまう。まだ蛍光灯は替えてもらえない。お互い、鍵の穴をスマホで照らし、解錠する。

 自転車が動かせる段になっても、私も彼もサドルに跨がる様子なく、一緒に坂を下って、コンビニに寄って、雑談して――と同じ行動をトレースした。