――新しい人生を始めてみませんか?
ある時、ポストにこんなチラシが投函されていた。詳しい説明は何も記されていない。チラシの一番下に辛うじて携帯番号が記載されているが、名前すら書かれていないありさまだ。
本来なら鼻で笑い、そんないかがわしいチラシなんて丸めてゴミ箱に放り込むところなのだろうけれど、私にはそれができなかった。
いや、その瞬間はむしろ人の弱みに付け込もうとしているように感じ、苛立ち、ナメんなと暴言を一言吐いて、手のひらの中でチラシを力任せにクチャクチャにはしたのだ。
でも――結局ゴミ箱に投げ入れることはできなかった。振り上げた拳をゆっくりと下ろし、手のひらを開いて、しわくちゃになった紙をもう片方の手のひらで伸ばしていた。
私は新しい自分を、いや、全く新しい人生を渇望していた。
今までのことは全てなかったことにして、しがらみなんかも綺麗さっぱり清算して、まるで初めて開いたノートのように、まっさらな誰にも汚されていない人生を一から歩いてみたい。
ある時、ポストにこんなチラシが投函されていた。詳しい説明は何も記されていない。チラシの一番下に辛うじて携帯番号が記載されているが、名前すら書かれていないありさまだ。
本来なら鼻で笑い、そんないかがわしいチラシなんて丸めてゴミ箱に放り込むところなのだろうけれど、私にはそれができなかった。
いや、その瞬間はむしろ人の弱みに付け込もうとしているように感じ、苛立ち、ナメんなと暴言を一言吐いて、手のひらの中でチラシを力任せにクチャクチャにはしたのだ。
でも――結局ゴミ箱に投げ入れることはできなかった。振り上げた拳をゆっくりと下ろし、手のひらを開いて、しわくちゃになった紙をもう片方の手のひらで伸ばしていた。
私は新しい自分を、いや、全く新しい人生を渇望していた。
今までのことは全てなかったことにして、しがらみなんかも綺麗さっぱり清算して、まるで初めて開いたノートのように、まっさらな誰にも汚されていない人生を一から歩いてみたい。