「何だ大声を出して。乱心か?」
「引っ越しって意外に疲れるんだよね」
「なら、部屋に案内する。夕飯まで休んでおけ」
朔の提案に、優希がニッと笑む。
「ボク作の可愛いシーツと枕カバーでベッドメーキングしておいたからね、寝心地最高だよ」
「この人が疲れそうな柔な人に見える? 乱心の方がピッタリよ」
各々が口にする自由な発言を聞きながらも、ナオは何も言う気が起こらず、大人しく朔に続きリビングから二階に繋がる階段を上がった。
――で、どうしてこの人たちも付いてくるの?
ナオの後ろにはマリナ、優希までいる。
「二階は土足禁止。そこで靴を脱いで」
階段を上がるとそこは第二のリビングみたいだった。そこに簡易な下駄箱が置いてあった。
「スリッパは――取り敢えず、その客人用のを履いておけ」
言われるがまま履き替えながらも、ナオの意識は他に移っていた。
「――凄い!」
ミニホールに天井までの可動式本棚が設えてあり、そこに本がぎっしり並んでいたのだ。
「八列も!」
趣味は読書のみ、と言って過言ではないほど本好きのナオは目を輝かせる。
「お前、読書家か? ここにあるのは一部だ。一階の図書室には一万冊ほどある。好きに読んでいいぞ」
今の今までナオは朔に嫌悪を抱いていた。だが、僅かながらそれが撤回された瞬間だった。
「嬉しいです。ありがとうございます」
「へー、ずっと気持ち悪い笑いばかり浮かべてたけど、お前、笑えるんだな」
だが、心からの謝辞に対して朔は薄ら笑いを浮かべた――と同時に、ナオの中で僅かにアップした朔への好感度が一気に下がった。
「うわっ! ナオちゃんの顔、怖っ! スマイルスマイル。えっと、こっちが博士の部屋で、向かいがボクの部屋」
ホールから伸びる廊下に歩みを進め、優希が右手のドアを開ける。
「ボクの才能を見せ付けてあげるから夕食後においで。じゃあ、後でね」
パタンとドアが閉まると、その隣の部屋をマリナが開ける。そして、肩越しに振り向き、「着替えたら夕飯の支度、手伝うね」とウインクする。
「手伝わなくていい。お前は再追試の勉強をしろ!」
だが、朔の返事はけんもほろろだった。
「もう! 補習なんて大嫌い! 試験なんて受けたくない!」
バタンと乱暴に閉まったドアを見つめ、制服だったのはそういう訳かとナオはほくそ笑む。
「そして、お前の部屋はここだ」
マリナの向かいのドアを開けながら、「俺の部屋はそこ」と朔が廊下の突き当たりの部屋を顎で指した。
「サニタリールームは読書スペースの奥だ。一階はバスルームの横にあるが、それは夕食の前にでも案内する」
部屋の入り口にバッグを下ろすと、「先に到着した荷物はそこに置いてある」と視線で段ボール箱を指し、ドアを閉めるとその場を立ち去った。
遠くなる足音を聞きながら、ナオは足元にある三つの段ボール箱に目をやり、部屋の中を見渡した。
「引っ越しって意外に疲れるんだよね」
「なら、部屋に案内する。夕飯まで休んでおけ」
朔の提案に、優希がニッと笑む。
「ボク作の可愛いシーツと枕カバーでベッドメーキングしておいたからね、寝心地最高だよ」
「この人が疲れそうな柔な人に見える? 乱心の方がピッタリよ」
各々が口にする自由な発言を聞きながらも、ナオは何も言う気が起こらず、大人しく朔に続きリビングから二階に繋がる階段を上がった。
――で、どうしてこの人たちも付いてくるの?
ナオの後ろにはマリナ、優希までいる。
「二階は土足禁止。そこで靴を脱いで」
階段を上がるとそこは第二のリビングみたいだった。そこに簡易な下駄箱が置いてあった。
「スリッパは――取り敢えず、その客人用のを履いておけ」
言われるがまま履き替えながらも、ナオの意識は他に移っていた。
「――凄い!」
ミニホールに天井までの可動式本棚が設えてあり、そこに本がぎっしり並んでいたのだ。
「八列も!」
趣味は読書のみ、と言って過言ではないほど本好きのナオは目を輝かせる。
「お前、読書家か? ここにあるのは一部だ。一階の図書室には一万冊ほどある。好きに読んでいいぞ」
今の今までナオは朔に嫌悪を抱いていた。だが、僅かながらそれが撤回された瞬間だった。
「嬉しいです。ありがとうございます」
「へー、ずっと気持ち悪い笑いばかり浮かべてたけど、お前、笑えるんだな」
だが、心からの謝辞に対して朔は薄ら笑いを浮かべた――と同時に、ナオの中で僅かにアップした朔への好感度が一気に下がった。
「うわっ! ナオちゃんの顔、怖っ! スマイルスマイル。えっと、こっちが博士の部屋で、向かいがボクの部屋」
ホールから伸びる廊下に歩みを進め、優希が右手のドアを開ける。
「ボクの才能を見せ付けてあげるから夕食後においで。じゃあ、後でね」
パタンとドアが閉まると、その隣の部屋をマリナが開ける。そして、肩越しに振り向き、「着替えたら夕飯の支度、手伝うね」とウインクする。
「手伝わなくていい。お前は再追試の勉強をしろ!」
だが、朔の返事はけんもほろろだった。
「もう! 補習なんて大嫌い! 試験なんて受けたくない!」
バタンと乱暴に閉まったドアを見つめ、制服だったのはそういう訳かとナオはほくそ笑む。
「そして、お前の部屋はここだ」
マリナの向かいのドアを開けながら、「俺の部屋はそこ」と朔が廊下の突き当たりの部屋を顎で指した。
「サニタリールームは読書スペースの奥だ。一階はバスルームの横にあるが、それは夕食の前にでも案内する」
部屋の入り口にバッグを下ろすと、「先に到着した荷物はそこに置いてある」と視線で段ボール箱を指し、ドアを閉めるとその場を立ち去った。
遠くなる足音を聞きながら、ナオは足元にある三つの段ボール箱に目をやり、部屋の中を見渡した。