どういうわけか、俺は『女子生徒に手を出した、いかがわしい淫行教師』という嫌疑で、自宅謹慎を申しつけられた。


 処分が決まるまでは保留ということになっているものの、反論は認められそうになかった。校内では、俺に襲われたという女子生徒の訴えが全面的に肯定されている。
 教師にとって、悪い噂や評判は致命的だ。ましてや、女子生徒への淫行疑惑。社会的に抹殺されたも同然。

「冗談じゃない。あの部屋には三秒もいなかった。いくら俺でも、そんな短時間じゃなにもできないっつーの」

 俺は壁をたたいて日々を過ごした。

 進路指導室で俺を嵌めた女子生徒は、三年の女子だった。時間が経ってから、ようやく思い出した。

 あいつは、文芸創作部部長の彼女。

 彼女は部に入っていない。けれど、ときおり部長と一緒に俺のところへ顔を出すからわりと覚えている。直接、俺がクラス担任や教科を受け持ったことはない。

 しかし、薄ーい認識しかない女子生徒に、なぜ騙されたのか。呼び出しの手紙を持っていたのは、咲久良だった。そして、咲久良は来なかった。


 家族会議が終わったあと、咲久良本人からは、あの忌まわしい呼び出し手紙をもらっただけだ。
 もちろん、俺のほうから連絡してもよかったのだが、こちらから恋人ごっこ終了を切り出したために、言えなかった。今、下手に行動を起こして巻き込んだら、あいつも人生が終わる。

 まさか、あいつにも嵌められた? 用済みの男として、捨てられた? 俺は恋人ごっこを遂行する上で、あいつの家庭の事情を深く知り過ぎた……そういうことなのか? 教師と生徒の甘い青春物語かと思ったら、ミステリーだったのか?

「あんなにつきまとって来たんだし、あいつのほうからなにか言ってくればいいのに」

 血迷った俺は責任転嫁に走っていた。

 このままでは、女子生徒に手を出したという罪で解雇されるだろう。
 あんなところで裸になって待ちぶせなんて、俺を陥れるためでしかない。女子生徒の裸なんてほとんど見ていない。肩の端や下着をほんの少し垣間見て驚いただけだ。
 なのに、仕事を失うなんて。理由が理由だけに、再就職だって厳しい。積んだ、終わった、俺の人生。

「女って、つくづく怖い生き物だ」


 外出できないので、昨夜の俺は酔った勢いに乗じ、携帯の履歴に残っていた適当な女を部屋に呼び出してめちゃくちゃしたが、気分は晴れないどころか、猛省して沈む一方。
 ……さらに堕落してどうするんだ、俺。

 自己嫌悪のあまり、ベッドから一歩も出られない。我ながら、ひどい。