放課後が近づくにつれて、俺は浮わついてきた。

 早く、咲久良とふたりきりで話がしたかったのだ。昨日のこと、進路のこと。もしかしたら、感謝されたかったのかもしれない。

 だが、ふたりきりの時間が来るのを楽しみに待っていたと、咲久良に思われたくなくて、俺はわざとゆっくり進路指導室へ赴いた。
 どうせ咲久良のことだ、婚約問題から頭を切り替え、明るい将来に向けてひとりでもいろいろ調べていることだろう。

「待たせたな、咲久良」

 ドアを開いた瞬間、俺は全身硬直した。

 誰かいる。咲久良か?
 
 否。

 進路指導室にうずくまっていたのは、咲久良ではなくほかの生徒だった。髪型が違う。誰だ? 俺は必死に頭を動かそうとした。けれど、目の前の生徒を直視できないので、正体が分からない。

 なぜなら、生徒は女子で、上半身裸だったのだ。
 お前はどこの誰だ……聞きたいけれど、俺は声が出なかった。

「きゃあああああああああーっ! やめてください、土方先生。誰か、助けて」

 進路指導室を突き抜け、廊下に響き渡ったその悲鳴。

 俺は、すぐさま駆けつけてきた教職員たちによって、捕縛された。