私服姿、わりといいかもと思った瞬間、たぶん俺は教師の道を外していた。


 帰りの車の中、助手席に座る教え子・咲久良(さくら)の身体を、頭の中ではいけないと思いつつ、俺はぎゅっと強く、抱き締めていた。


 華奢で頼りないけれど、そのぬくもりは、ほんものだった。