次に、あんさしをむんずと掴む。


丸い柄の先は、40センチほど平らに伸びていてそこにあんこを詰め込む。これもステンレス製でよく見かけるけど、僕はあえて木で手作りをした。

お客さんが、1番に見るところだから。



だから、木の温もりを伝えたかったんだ。


ヘラであんこを切るようにして、生地の上に落としていく。

この時、気をつけるのが、頭のほうにたくさん入れること。そのため、あんさしに詰める時点で斜めにするんだ。そうすると、全体的にバランスよくあんこが行き渡る。



もちろん、尻尾までね。


ヘラで押すようにして生地を広げ、あんこを埋もれさせる。

薄皮たい焼きを作る時の基本だ。


あとは焼けるまで、じーっと待つ。今にも消えそうな弱火で、じっくりことこと煮込むように焼く。



焼き時間は決まっているわけじゃない。

急ぐなら、油をいっぱい引いて強火で焼けば、あっという間に出来上がるだろう。でも僕は、じーっと待つ。


ちなみに、油も引かない。



くっつかないかって?

それは大丈夫。鉄板に油を染み込ませるため、お店が終わったあとに、余った生地で何度も試し焼きをするから。だから僕の鉄板は、いつも艶やかだった。