鮪、ウニ、烏賊、いくら。たくさんの新鮮なネタがリーズナブルに味わうことができると評判のお寿司屋さん。

出前もやっていて、チャリですし桶を担ぎながらアーケードを走る若大将をよく見かけた。


喜多川は、先代もまだお店に出ていて、その息子と奥さんで切り盛りをしており、いつも忙しそうだ。

だからたまに、僕が出前を取ったりすると(よく牧子さんが一緒に食べようと取ってくれる)、重たいすし桶を持って、一人息子の直也くんが配達をしてくれたりもした。



お寿司と引き換えに、たい焼きをあげると喜んだものだ。

今も直也くんの子どもらしい笑顔が浮かんでくる。



「それが行ったらよ、ちゃんと陽子さんが相手してくれて。俺、なんて言ったらいいかわかんなくてよ」

源さんが話す陽子さんとは、直也くんの母親であり若大将の奥さんだ。



「てっきり床に伏せてるって思ったけどな?」

亀さんが、力なくたい焼きを食べた。


いつもなら尾っぽから豪快にいくのに。



「いや、よく見かけねーか?そこらへん歩いてるの」

そう言ってから楽さんは、大志くんをぎゅっと胸に抱きしめた。


大志くんが嬉しそうな声を上げる。



「やりきれないなぁ」

最後に、吾郎さんがもらした。