月曜日になりなんとか登校すると、校門のあたりには報道陣と思われる人たちがたくさんいた。
クラスでもその話で持ち切りになっていたが、私はじっとうつむいていることしかできなかった。

「稲垣さんて、ほら悪い人と遊んでたでしょう?」

「親が理事だと大変だよね」

「ほら、よく『死んでもいい』とか言ってたじゃん」

「ネットニュースのコメント見た? 結構、自業自得って書かれてたよね」

クラスのみんなのささやきに耳を塞ぎたくても、それすらできずに学校での時間をやり過ごすだけ。

現実が受け入れられない私を置き去りに、ただ時間だけが流れている感覚だった。
興味津々に沙希のことを尋ねてくるクラスメイトもいた。そのたびに「うるせえ」と追い払ってくれたのは和宏だった。

――ぜんぶ夢のなかの出来事のように思える。

沙希は今でも生きていて、そのうちひょっこり顔を見せる。
そんな気持ちが拭えずにいた。

水曜日になりようやく少し頭が動き出すのがわかった。
保護者への説明会が開催されるらしく、午後から半休になったのだ。
自分の部屋の絨毯の上でいつものように勝手に流れる涙と戦っている私。

ふと、このままではいけない、という思いが頭に浮かんだのはなぜ?

……泣いていても仕方ない。

沙希が死んだなんてまだ認めたくないのは今も同じ。

それでも、私にできることがあるのなら……。