「大丈夫か?」

和宏の声に私はうなずいてから歩き出すけれど、体に力が入らずに、ドアに肩をぶつけてしまった。
私の右肩を抱くように和宏が歩いてくれた。
廊下を進んでいるといくつかの教室から歓声が生まれている。休校になったことを喜んでいるのだろう。

「そこ、階段だから気をつけて」

「うん」

いつもと違い、やさしい声で教えてくれる和宏に支えられながら、気づけば校長室の前についていた。ドアの外で柊先生が待っていてくれる。

「ここからは有川だけしか入れないんだ」

固い口調でそう告げた柊先生に、和宏は数秒黙ってから一歩うしろにさがった。

「ドアの前にいるからなにかあったら大声で叫べ。いいな?」

そう言う和宏に答える間もなく、柊先生に連れられて中に入る。