和宏は優しくない。
今朝も結菜のひとつに結んだ髪を指さして『馬の尻尾みたい』なんてからかっているのを発見。
すかさず注意すると、心外な顔をしていた。
どうやら本人のなかでは褒めていたみたいで、

「喜ぶかと思った」

なんて言っている。

「そんなわけないでしょう。容姿のことをネタにするなんて信じられない、サイテー」

そう言う私に、結菜はなぜか首を横に振った。

「和宏くんに悪気はないんだから、そんなふうに言わないで」

「だろー? 芽衣は細かいんだよな」

ふたりの言葉に今度は私が目を丸くする番。

「なんで私が怒られるのよ……」

ぶう、とふくれて沙希の席を見やったけれど机には誰もいない。