「ああ。夕飯のときだったかな。お前に怒られたから明日から行くことにした、とかなんとか言ってたぞ」

沙希の一番仲が良いクラスメイトは私だということは周知の事実。

「ま、あとで確認するか。それにしてもまだまだ暑いなあ。久保田も痩せちゃうかもな」

「先生、それパワハラですわ」

教室に笑いが起きるなか、後ろを振り向く。ぽつんと持ち主を待っているのは沙希の机。

私にも、『明日は行く』と言っていたのに。これまで沙希は約束を破るようなことはなかったはずなのに……。

急に不安になりソワソワと落ち着かなくなる。
カバンのなかにあるスマホをこっそり見ても、やはりさっきのメッセージは既読になっていなかった。

休み時間に沙希にメールをしてみたが、返事はないまま時間だけが過ぎて行った。

クラスメイトにとっては、沙希がいないことは日常なので誰からも心配する声は聞けずにいた。


その日、沙希は結局学校にこなかった。