「それくらいええやん。今どきそういう管理って厳しいから大丈夫やろ。ふたりともちょっと考えかたが古すぎやで」

たしかに言われてみればそんな気もしてくる。
個人情報を入力するからこそ、安全なアプリってこともありえるよね。

「じゃあ帰ったら、もう一回やってみよっかな」

「ビーオーケーユー、ローマ字で〈BOKU〉」

「は?」

意味がわからず眉をしかめる私に、 久保田はニヤリと笑った。

「ログインネームやがな。アプリに登録するとき、ログインネームを決めんとあかんねん。僕は久保田からとってBOKUで登録してるんや。この名前でMOVERにも載せるから見てな」

ふぅん、ログインネームかぁ…。
本名を名乗らないで投稿ができるなら、まだいいよね。

和宏を見ると、早速ノートにハンドルネーム候補を書き始めている。
悔しいけれど、興味がある内容っていつも一緒なんだよね……。
ふと窓側の席に目をやれば、沙希はまだ登校していないらしく、彼女の机には他の女子が座って話しこんでいる。

「昨日来るって言ってたのにな……」

カバンのなかでスマホを操作し、
『まだ? 学校はじまるよ~』
とメッセージを送ったが既読にはならなかった。