どうやらいつもの元気が戻っているようだ。
ということで、私も遠慮なく臨戦態勢に入る。

「だれが小鹿よ。あんただってただのテニスバカでしょうが」

「芽衣だってただの恋愛バカだろうが」

「なによ!」

「なんだよ!」

にらみ合う私たちに、久保田がわざとらしくため息をついた。

「ふたりはほんま、仲がええんやなあ。いっそのこと、つき合っちゃえばええやん。きっとうまくいくと思うで」

一瞬の沈黙のあと、私と和宏はそろって久保田に叫ぶ。

「「ぜったいありえない!」」

私と和宏がつき合うなんて、一生ありえない。
いや、万が一つき合っても数分で別れてしまうだろう。
全然わかってくれてないんだから、とブツブツ言っていると目の前の結菜の顔が青ざめていることに気づく。
久保田の話を本気にしたのか、今にも泣きそうな表情。
和宏のことが本気で好きなんだろうな、と思う。

私みたいに気持ちをオープンにしてくれればアドバイスもできるのに、結菜はいつだって頑なにそれを認めようとはしない。
親友なのにそこが少しさみしいところなんだよね……。