ジングルベルのメロディが空に舞いあがり消えてゆく。
しばらくは無数にふってくる雪を眺めていた。

私が失いたくないもの……。

スマホを手に取り、電話帳からひとつを選び通話ボタンを押す。

プルルルルル

コールが六回鳴り、相手が出る。

「もしもし」と言ったきり黙る相手に私は言う。

「結菜、元気。学校休んでてごめんね」

「芽衣……大丈夫? みんな心配してるよ。私もずっと心配で……」

涙声の結菜に私は小さく笑ってみせた。

「大丈夫だよ。
……ううん、やっぱり大丈夫じゃない。

でも、少しずつ整理がついてきてる気がする」

「うん、うん」

「結菜、私の友達でいてくれてありがとう」

結菜の吐く息づかいだけが届く。

失ってから大切な存在に気づきたくない。