外に出ると、町には大粒の雪が舞っていた。
無精ひげの伸びた鈴木刑事がコートに手を突っこんだまま疲れた顔で空を見た。

「しばらくはマスコミもうるさいだろうが、お前はなにもしてないんだから堂々としていればいい」

「うん……」

「有川、お前は生きている。これからもお前らしくがんばれ」

その言葉が胸に温かかった。

「鈴木さん、今までいろいろありがとう」

「よせ。素直な有川は有川らしくない」

ニヒルに唇をあげた鈴木刑事が右手を差し出した。
大きくてごつい手を握る。

日記に出てきた警察官が鈴木刑事だったなんて……。

どちらかといえばひょろっとした印象だった。
彼なりに贖罪を果たすために本気で刑事になろうとしたんだ、と思った。

「自分に素直であれ。失くしてから後悔するようなことはするなよ」

「うん」

手を離すと急に冷たい風を感じた。
そばにいたときには気づかない温度。

私はこれまでになにを失ってきたのだろう……。