鈴木刑事は手帳を取り出すと、空白のページに『佐々木香織』『柊我音』と黒いペンで記した。

「佐々木香織は、おそらくこの日記に書いてあるストーカーの手によって殺害されたと警察はみている。
そして、俺はこの事件に……深く関わっているんだ」

「え……」

閉じた日記帳を見る。そういえば鈴木という名前が出てきたよね……。

「俺は中央署の警察官だった。佐々木香織を守るべき人物だった。
でも、守れなかった」


言葉を失う私に、鈴木刑事はイライラしたように頭をかいた。

「佐々木香織や母親から何度も相談を受けていたのに、結局なんにもできなかった。
刑事職に転向し、いつか犯人を見つけてやろうと思った。
なのに、日々の忙しさに紛れてしまっていたんだ」

悔しそうに鈴木刑事はうつむく。

「藤本さんにもそのときに会ったの?」

「あの事件があったあと何度も病院へ話を聞きに行った。
そのときに『香織の担当』として紹介されたはずだった。
なのに俺はすっかり忘れてしまっていたんだ」

藤本の名前は日記にも出てきている。

初めは友好的に、最後は嫌悪であふれる人物として。