水で口を湿らせると、鈴木刑事は軽く息をついた。

「今から三年前のクリスマスの夜、二方原病院で看護師と介護員、入院していた高齢男性、そして中学二年生の少女が何者かによって殺されるという事件が起きた」

「その中学二年生の少女、っていうのが香織ちゃん……?」

聞かなくても答えはわかっていた。
佐々木香織、三年前に何度もニュースで見た名前だ。

同じ市内で同い年の子が殺されたと知り、強いショックを覚えたことは記憶に新しい。

「たしか……犯人は見つかってないんだよね?」

「防犯カメラの映像も消され、証拠品もなかった。
犯人の顔を見たカップルや子供もいたが、帽子をかぶっていたこと、そして恐怖のせいで誰もしっかりと覚えていなかった。

あれから三年経っても、俺たちはなんの足取りも追えていないままだ」


苦し気に顔を歪めた鈴木刑事に、私はグラスのコーラの泡に目をやった。

たしか……内部の患者の犯行じゃないかと言われていたような……。

衝撃を受けた事件も、時間とともに風化され私の記憶から消えてしまっていた。