「……どうして、どうして、こんなことを……するの?」

「僕を裏切ったからだよ」

「裏切った? わたしが……あなたを裏切ったの?」

いったいどうしてこんなことになったのだろう?

男が大きなナイフを胸の高さでゆっくりと構えた。

「香織、君を本当に愛している。
だからこそ、君が生きているのが耐えられない。
君が他の男と話しているのも耐えられないんだよ。

君ならわかってくれるよね?」

首をかしげて男はほほ笑んだ。


嫌だ……こんな死にかた嫌だよ。

必死で逃れようと首を横に振っても、男はすぐ近くまで迫っている。

「死によって永遠に僕たちは結ばれる。
すぐに僕もあとを追うから安心して。ふたりで幸せになろう」


幸せだったよ。
わたしはこの男に会うまでは幸せだったのに……。


「お願い……わたしは生きたいよ。生きたいよぉ!!」

「ごめんね」

「助けて! 誰か助けて!」


「さようなら、僕の愛した香織」