ピンポーン

かぶせるように突然、館内放送の前になるチャイムが響き渡った。
それだけで彼女のほうは悲鳴を大きくした。

――ジジ……ゴトン

マイクを操る音に続いて、

「香織、聞こえているかい?」

さっきの男の声が聞こえた。

「キャー!」

彼女のほうがベッドの上に飛びあがって体を丸める。

「香織、鬼ごっこは終わりにしよう。時間がないんだ。早く出ておいで」

「助けて!」

床に置いた電話に向かって叫ぶ。

「もしもし? 佐々木さん、この声は?」

「だから男が、男がっ……。本当なんです、たくさんの人が殺されています」

くじけそうなほど涙があふれている。

だけど、このまま殺されるなんて絶対にイヤだ。

――ゴトン

マイクを動かす音が聞こえた。