「警察へ電話をしてください!」

叫ぶわたしに、

「ああ、そうだ。警察、警察……」

携帯電話を取り出す彼氏だが指先が震えてうまく操作できない。指先からこぼれ落ちた携帯電話に、彼はあとずさりをした。

「無理だ……。なあ、お前やれよ」

「できないよ。あたし、できないよ!」

彼女のほうはパニックに陥ってるのか、部屋の隅で首を横に振り続けている。

床に落ちた携帯電話を手に取ると、わたしは自ら警察へ電話をかけた。

落ち着け、と自分に言い聞かせる。

「110番です。事件ですか、事故ですか?」

すぐにつながった電話から男性の声が聞こえたとき、わたしはようやくこれが現実に起きていることだと自覚した。

「あ……あのっ」

「落ち着いてください。どうかされましたか?」

「たっ、助けてください!」

叫ぶわたしの声に、

「助けて!」

ふたりも口々に声をあげたので、わたしはスピーカーホンにして床に携帯電話を置いた。