「やあ、こんばんは」
「こん……」言いかけた杏の口が止まったのは持っているナイフに気づいたからだろう。じっと男の手元に視線が置かれている。
「杏ちゃん、ドアを閉めて! 早く!」
叫ぶわたしに、
「香織ちゃん、怖い。怖いよ……」
杏の身体は動かない。ただならぬ状況を察し固まってしまったのだろう。
廊下を横切り杏の部屋の前へ急いだ。
「香織ちゃん……」
「いい、杏ちゃん。ドアを閉めるからね。なかからカギかけられるの知っているよね?」
こくんとうなずく杏の目をしっかりと見て諭す。
「なにがあっても絶対に出てきちゃダメ。わかった?」
「うん。でも……」
「約束だからね」
強引にドアを閉めると、遅れてカチャッとカギのかかる音が聞こえたので安心する。
振り向くと男はゆらゆらと体を揺らせている。
「許さない。許さない。許さない」
ブツブツつぶやきながら男がまた足を前に出したので、わたしはゆっくりと反対側の壁へ戻る。杏から気を逸らせなくちゃいけない。
「こん……」言いかけた杏の口が止まったのは持っているナイフに気づいたからだろう。じっと男の手元に視線が置かれている。
「杏ちゃん、ドアを閉めて! 早く!」
叫ぶわたしに、
「香織ちゃん、怖い。怖いよ……」
杏の身体は動かない。ただならぬ状況を察し固まってしまったのだろう。
廊下を横切り杏の部屋の前へ急いだ。
「香織ちゃん……」
「いい、杏ちゃん。ドアを閉めるからね。なかからカギかけられるの知っているよね?」
こくんとうなずく杏の目をしっかりと見て諭す。
「なにがあっても絶対に出てきちゃダメ。わかった?」
「うん。でも……」
「約束だからね」
強引にドアを閉めると、遅れてカチャッとカギのかかる音が聞こえたので安心する。
振り向くと男はゆらゆらと体を揺らせている。
「許さない。許さない。許さない」
ブツブツつぶやきながら男がまた足を前に出したので、わたしはゆっくりと反対側の壁へ戻る。杏から気を逸らせなくちゃいけない。