「やっと会えたね、香織」

うれしそうにその男は言った。

ボサボサに伸びた髪に赤いパーカー姿。暗い照明のせいでその顔はあまり見えないけれど、わたしの知っている人じゃなかった。

「だ、誰……」

ガチガチと鳴る歯でなんとか尋ねるが、男は笑顔のまま微動だにしない。よく見ると、男の視線はわたしの少し上あたりをふらふらさまよっていた。

なにかブツブツつぶやいている。

この人が……ストーカーなの?

それともこれはわたしの見ている幻?

手にあるサバイバルナイフが赤黒く染まっていて、まるで元からそういう色だったかのよう。


そのときになってようやくわたしは気づいた。男の着ているパーカーは、元々は白色だということを。

返り血のせいで赤色になっているんだ……。

まるで落雷に打たれたかのように目の前が真っ暗になる。

「あなたがみんなを殺した……の?」

意思とは関係なく、口がそうしゃべっていた。