そのとき、階下がにわかに騒がしくなった。バタバタといくつもの足音が折り重なって聞こえる。

「あ……」

姿を現したのは、朝まで一緒だった鈴木刑事だった。私の顔を見るとハッと目を見開く。

「なんでここにいるんだ」

怒ったような口調の鈴木刑事のうしろには、警察官が数名控えている。

「……一体、どうしたの?」

ただならぬ緊張感があたりに漂っていた。

鈴木刑事は私の質問には答えずに振りかえった。

「先に行ってくれ」

彼らは黙って、私のそばをすり抜けて階段を駆けあがっていく。
狭い踊り場でふたりきり。

「どういうこと……? ねぇ、なにがあったのか教えてよ」

うわんと響く声に、鈴木刑事は苦い顔を浮かべた。

「……これから、事件の重要参考人を連行する」

「犯人がわかったの?」

「あくまで〈容疑者〉だ」

容疑者がわかったというのに、鈴木刑事は厳しい顔を崩さない。
ズキンと胸が大きく跳ねた。

ここにいるということは、学校に犯人がいるということ。
ようやくそこに思考がたどり着いたのだ。胸騒ぎが波のように何度も押し寄せても、私は言葉を発せずにいた。

長い沈黙の後、鈴木刑事は声をしぼりだすように告げた。

「柊我音を重要参考人として連行する」