見おろすと駐車スペースに1台の車が停まるところだった。
あれは……パトカーだ。

勢いよく開いたドアから、警官が三名飛び出し、あとからスーツ姿の男性が降りてきた。あれは……鈴木刑事だ。

そのうしろにも数台のパトカーが続いている。
再び緊張が走る。ひょっとしたら直樹になにかが……。

急いで席に戻るとこっそりスマホを取り出し直樹にメッセージを打つ。

【お兄ちゃん、今なにしてる?】

送信ボタンを押して、顔をあげる。
暖房のせいではなく頬が燃えるように暑い反面、背筋は凍えるほど寒かった。

既読が、つかない。
早く、早く……。

何度画面をチェックしてもなかなか既読にならない。
悪い想像ばかりが膨らんでいく。

「すみません、トイレに行ってもいいですか?」
耐え切れない不安に手を挙げた。

柊先生は、チラッとこちらを見るとうなずいてくれたので急いで廊下へ出る。階段まで走り、数段降りたところで直樹に電話をかけた。

直樹の好きな曲がのん気に流れている。
お兄ちゃん、早く出て!
スマホを握りしめる手が汗をかいているのがわかった。

途切れる音楽に続き、

「どうした、芽衣?」

直樹の声がした。

「お兄ちゃん? お兄ちゃんなんだね?」

「なに言ってんだよ。他に誰がいるんだ」

呆れたような声に、体中から力が抜けた。

よかった、なんともなかったんだ。

「もう! 既読にならないからなにかあったかと思ったじゃない」

「あ、メッセージくれてたのか。さっき叔母さん家について寝ちゃってたよ」

ひょうひょうとした口調に、ようやく安堵のため息がつけた。

「よかった……」