午後一番の授業は柊先生の英語だった。
これですべての期末テストが返ってきた。

事件のせいだといったら言い訳かもしれないが、結果は散々だったし、それは和宏や久保田も同じようだった。

しかし、それよりも気になることがあった。今日の柊先生が、あからさまにいつもと様子が違ったことだ。

心ここにあらず、といったかんじで表情も暗いような気がする。

テストの見直しをすることになり、班にわかれて自主学習となった。


柊先生がぐったりと椅子に座っているところへ、和宏が近寄って行くのが見えた。

「先生、寝不足っすか?」

そう言ってプリントの束を手渡す和宏に柊先生は閉じていた瞳を開いた。

「……ああ」

「俺も寝不足。一緒ですね」

ニコニコと話しかける和宏は彼なりに心配しているのだろう。が、柊先生は両手で顔を覆い和宏との会話を一方的に終えてしまった。

「はい、これ出して来て」

班長にプリントを渡された私は、和宏と入れ替わりに柊先生に近づいた。

「これ、プリントです」

そう言ったとたん、柊先生が顔から両手をおろし私を見た。

「……っ」

思わず息を呑んだのは、柊先生が見たこともないほど鋭い目で私をにらんだから。

が、それは一瞬のことで、すぐに柊先生は私からプリントを受け取ると、

「ありがとう」

と口元に笑みを浮かべた。


今のは……なんだったのだろう。

違和感にしばらく立ち尽くしていたが、次の班の生徒が提出に来たのでようやく歩き出す。ふと、窓側が騒がしくなった。