昼休み、トイレを済ませ鏡に自分の顔を映してみる。ひどい顔をしている。
ため息を残してドアを開けると、目の前に結菜が立っていた。笑顔を作る余裕もなくすれ違う。

が、結菜が私の手を握ったから驚く。

「え……」

「聞いたの。和宏くんたちから……聞いたの」

そう言った結菜は私を廊下の隅に連れて行った。

「お兄さんが犯人に名指しされたんでしょう? 大丈夫なの……?」

「うん。……ううん、全然大丈夫じゃない」

言い直す私に、結菜は瞳いっぱいに涙を浮かべていた。

「私、なんて言っていいのか……。だけど、心配で……」

「結菜……」

「ごめんね。芽衣がつらい時にそばにいてあげられなくって……」

こらえきれずこぼれ落ちる涙を見て、私も同じように泣いていた。
握り合った手に力をこめて私たちはただ涙を流した。

「私は大丈夫。学校が終わったらトムトムバーガーに来てくれる? それが終わったら、しばらく親戚の家に避難しなくちゃならないの」

「うん、うん……」

泣きじゃくる結菜と自然に抱きしめ合った。
旅立つ前に結菜と話せて良かった。そう思っていた。