朝が、また来る。
玄関を出ると、ついさっきまでそばにいてくれた鈴木刑事が立っていた。

「用意できたか?」

目の下に濃いクマを浮かべ、いつも以上にヨレヨレになっているスーツに申し訳ない気持ちになりながら家の鍵を閉めた。

結局、和宏にも朝方までにいてもらった。今、制服に着替えに家に戻っているところ。

申し訳なさと混乱でさっきから頭痛が止まらない。

母は、他の刑事とともに始発の新幹線で直樹を迎えに行った。うちの家族はそのまま大阪にいる親戚の家に避難することになった。
この家にいるよりは安全だ、という警察の判断だった。

私も授業が終わったあと合流することに決まった。本来ならすぐにでも一緒に行きたかったし、母もしきりにそう言ってくれた。

でも、できなかった。
事件が大きく動き出している今、どうしても最後まで見届けたい気持ちが強かった。

いったいになにが起きているのか、自分の目で確かめたい。

しびれた頭がまだ痛い。

「授業が終わるころ迎えに行く」

ボソボソとしゃべる鈴木刑事に、

「うん」

と答えると、朝の空気が口のなかに冷たかった。