彼女はいわゆるヤンキーとよばれるような風貌で、髪も金髪に近い茶色。
男性は作業着姿で社会人だろうが、目つきの鋭い人だった。

「あんたうるさいんだけど」

不満げに口にした彼女が、血だらけのわたしの手元に気づきギョッとした。

「あそこで看護師さんたちが倒れているんです!」

なんとか声をしぼりだすと、

「なんだって!」

と、彼氏のほうが小走りでナースステーションへ駆けて行く。
カウンターを覗き込んだ彼氏が、ウッとうめいた。

「えっ、マジ?」

彼女のほうも、ただならぬ状況だと理解したらしく顔つきが変わった。

「おねがい、早く警察を呼んでください」

必死で懇願する。とにかく誰かいてくれてよかった。
へなへなと力が抜けていくのがわかる。

彼氏のほうが「わかった」と、携帯電話を手にしたそのときだった。

「香織……」

廊下の向こう側から声が聞こえた。
一瞬で、身体から血の気が引いていく。