ガラッ
見ると、ひとつの部屋のドアが開いた。

「ここ、ここです!」

「どうしました?」

部屋からふらりと出て来た初老の男性が声をかけてくる。

「あそこで、あそこで看護師さんたちが」

声も体もおかしいくらい震えている。気づくと自分の両手が真っ赤に染まっていた。

「救急車を呼んでください。お願い、お願いします!」

叫んでも老人は、にこやかな笑みを浮かべている。

「そうですね、雪がふりますね」

「わからないの!? あそこ、あそこに!」

指を必死でナースステーションに向けるが、笑顔の老人の目はどこか遠くの宙を眺めているだけだった。

遠くでまたドアの開く音が聞こえ、顔を向ける。

一番奥の部屋から出てきたのは、茶髪の女子中学生。わたしが入院する前からいて、いつも怒った顔をしている。うしろから続いて出てきたのはその彼氏だという男性。

泊まりは禁止なのにこっそり隠れていたのだろう。
わらにもすがる気持ちで彼らの元へ転びそうになりながら走った。