顔をこちらに向けて倒れているヘルパーの胸元からは、血があふれていた。身体がビクンッビクンッと痙攣していて、目は白目を剥いている。

これは……現実? それともわたしの精神が見せている幻なの?

一歩も動けずに固まるわたし。

「助けて、助けて……」

と、繰り返しているのは看護師。

首のあたりから血が噴き出している。
あまりの光景に吐き気が襲う。

「だ、大丈夫ですか!?」

なんとかしなくちゃ、と自分に指令を出した。
そばにあった手拭きのタオルをつかむと、それで看護師の首を押さえる。
白いタオルはみるみる鮮血に染まっていく。

「止まらないよ。どうしよう、どうしようっ!」

真っ赤なタオルからは、すでに血がしたたってきていた。

「あああああ」

うなるような声が看護師の口から洩れている。
カウンターの上の電話機が目に入った。

受話器を取り、わたしは血のついた指で119のボタンを押す。

――反応がない。

一度戻してから、今度は110を押した。
同じく、反応がなかった。

電話機の先をみると、切れたコードがだらりと垂れさがって揺れている。

「え……なんで……」