「あれ……」

思わずつぶやいたのは、ステーションの中が乱雑になっていたから。
書類が机の上にバラバラになって広がっている。
誰かが暴れたみたいだ。

そう思ったのと同時に、あたりに妙な匂いが漂っていることに気づいた。
これはなんだろう……。

カウンターに手を置き廊下を見渡していると、

「たすけ……て」

小さな声をわたしの耳がとらえた。
声はカウンターの内側から聞こえているようだった。
また薬のせいでおかしくなっているのかもしれない。

「誰か……いますか?」

おそるおそる尋ねてみると、ガサッと紙がこすれるような音に続き、

「助けて」

女性の声がたしかにしている。

ステーションの入り口に回りなかに入ると、ものすごい異臭が鼻についた。目に飛びこんできたのは、カウンターの内側で重なるようにして倒れている人の姿。
看護師とヘルパーだとすぐにわかる。

「え……どうしたんですか?」

近づいてゆく足が、すぐに止まった。