みんな敵だ。
誰もわたしを守ってはくれない。

何が現実で、何が妄想なのか。
境界線はどんどん不透明になっている。

館内にアナウンスが響いていることに気づいた。
たしか……町内会の慰問があるって言っていたよね。

行きたくないけれど、ここにひとりでいるほうが怖かった。
それに集まりに参加すれば、面会禁止も早めに解かれるかもしれない。


重い体と心を引きずり、フロアーに出た。
みんながわたしを見ている気がした。

にぎやかに町内会の年配者たちが素人まるだしのマジックを披露しているのを横目で見ながら、ソファに腰をおろす。

この中にストーカーがいるかも。
そう思うと、全員を疑いのまなざしで見てしまう。
町内会の人たちは、同じ黄色の帽子と白いパーカーで揃えている。

その中に異様に深く帽子をかぶっている男性がいた。
ドキッとするが、すぐに見えなくなった。
帽子をかぶりなおしたのか、泣いている子供たちをあやしに行ってしまったのか。