わたしの名前はなんだっけ……?
さっきからぼんやりと考えている。

天井の模様が見えるということはまだ昼間なのだろう。けれど、窓のないこの部屋では時間もあまりわからない。

そう、わたしの名前……。

「わたしは……」

かすれた声が口からこぼれた。こんな声をしていたんだ、と久しぶりに思い出す。

「わたしは、そう……佐々木、佐々木香織」

自分の名前を口にすれば、少しぼやけた意識がはっきりとした気分になる。

ベッドの横にある壁をそっとなぞってみる。平らに見えるのに、指先にはボコボコとした感触があった。
何度も繰りかえしては、時間が経つのをじっと待つ。

待つ、ってなにを?

自分に問いかけてみても答えは返ってこない。