直樹は最初は驚いていたが、やがて適度なあいづちを返してくれた。最後に自分の名前が裏BBSに書かれていたことを知るとしばらく黙りこんだ。

「まじかよ……。なんで俺なんだよ」

つぶやきがスマホの向こうから聞こえる。

「とにかく、早く向こうの警察に保護してもらって」

「大丈夫だよ、ここは安全だから」

「大丈夫じゃないよ! だって、みんな……みんなそうやって……」

気づけば涙があふれていた。
みんなそれぞれに気をつけていたはず。
それでも確実に犯人は実行してきた。直樹のいる名古屋に飛ぶことだって容易だろう。
もしかしたらすでに直樹の部屋の前にいるかもしれない。
這いあがる恐怖にスマホをギュッと握りしめていた。

「お願いだからしっかりカギをかけて。誰が部屋にきてもなかに入れないで。そうしないとお兄ちゃんが……」

最後は声にならない。もしも直樹が殺されたならどうすればいいの?