直樹の会社には全国に支社があるらしくたまに出張にでかけている。
昨日の夕飯のときにそういえば言っていたような気がした。

どうしよう、どうしよう!
オロオロして泣きそうになるけれど、今は行動を起こすのが先。

「なにかあったの?」

ようやく起きあがった母の問いには答えず、自分の部屋に駆け戻る。
スマホを手に取り電話帳から直樹の名前を探して電話をかけた。

早く、早く……。

のん気な着うたが流れている間、ウロウロと部屋を歩き回る。直樹の好きな曲がこんなにももどかしく感じたことはなかった。

やがて歌が唐突に途切れた。

「どうした? 電話してくるなんて珍しいな」

直樹の声を聞いたとたん、私は絨毯の上に座りこんでいた。

「お兄ちゃん、大丈夫なの? 無事なんだね!?」

「無事って? いったい――」

「大変なの!」

自分の胸を押さえながら、私はさっき見たことを説明した。