何度か会ったことがある大輔は、六歳年上の社会人。

学校に車で迎えにきたときに挨拶する程度だけど、細身の短髪でなかなか男前のイメージだ。

まあ、柊先生には負けるけど。

「え、大輔さん、仕事辞めちゃったの?」

「うん。また他の仕事探してるとこみたい。それにさ、学校に行ってもつまんないじゃん?」

「ひどい。私は会うのを楽しみにしているのに」

「芽衣と話をするのはおもしろいよ。ただ、なんか学校の雰囲気が合わないんだよね。それにどうせ行かなくても三年生にはなれるだろうし。それにあたし、いつ死んでもいいし」

『いつ死んでもいい』は沙希の口グセだ。

「もう、そんなこと言わないでよ。会いたいんだからちゃんと来てよ」

「わかったからそんな怒らないで。ちょっと落ちこんでいるんだからなぐさめてよ」

くぐもった声がいつものトーンじゃないことに、ようやく気づいた。

ベッドのはしに腰かけてスマホをしっかりと耳に当てた。

「なにかあったの? 大輔さんとケンカでもしたの?」

「大輔とはもう何年もケンカしてないよ。てか、そういうことじゃなくてさ……。ほら、うちの父親って理事とかやってんじゃん?」

「あ、うん」

「そういうので変なウワサとか立てられてるのも知ってる。でも、あの人の力には頼ってないつもり。でも周りはそうは見てくれない。だから学校辞めて就職してもいいかな、って思ってたんだ」