そんなことを思っているとスマホが急に鳴り出したから、

「ひゃ!」

思わず声をあげてしまった。

まさか、という思いで画面を見ると鈴木刑事の名前が表示されていた。
これはこれでよくない。鈴木刑事からの電話はたいてい悪い知らせばかりだから。

「藤本昌代、いや今田昌代が殺害された」

案の定、鈴木刑事は開口一番、悪いニュースを告げた。
寝る前に裏BBSを確認したときは更新されていなかったので、すっかり安心してしまっていた。

「もしもし?」

無言になってしまう私に、不機嫌そうに彼は言った。

「あ、聞こえてるよ。でも待って……それって本当に?」

「今、身元確認も終わった。やはり赤い手紙もそばに落ちていたよ」

時計の針はもうすぐ夜の十時になるところ。
鈴木刑事の声には張りがなく、疲れ切っているのが伝わってくる。
だけど……。

「警察が見守るって言ってたじゃん! それなのにどうして?」

責めても仕方ないことはわかっていた。
とがめるような口調になる自分を恥じ、私はもう一度音もなく落ちる雪を見た。

「ごめん……。いつのことなの?」

「今日の夜七時半のことだ。彼女は今は看護師を辞めてスーパーで働いていたんだ。富士見ヶ丘ミディアムスーパーって知ってるか?」

郊外にある大きなスーパーだ。

「うん何度か行ったことあるよ」

スマホを持つ手が冬なのに汗ばんでいる。