和宏のことを気になり出してからというもの、彼の背中ばかりを見送っている気がした。
あんなにやさしかったのに、急に冷たくなったように思えてしまう。話しかけても今のようにそっけない態度ばかり。

意識しすぎているせいなんだろうな……。
こんな苦しみを結菜は感じていたんだな、と改めて知る。

「なあなあ」

さっきまで和宏がいた席に久保田がドカッと座った。

「柊先生のことはもうええの?」

「え?」

耳を疑う話題に聞き返す。今、なんて言ったの?

「ほら、あんなに好きやったのに、最近は話題にも出えへんやん」

返答に詰まる私に、久保田はあたりをサッと見回してから顔を近づけて言う。

「柊先生をやめて、和宏を好きになってもうたんか?」

「なに言ってるのよ。冗談でも笑えないし」

急激に鼓動が速くなるのを隠すように立ちあがる。どうして久保田がそんなこと言ってくるのよ。